人妻！人妻！人妻！

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美人市議の受難

登場人物

中田　初音：４１歳

＊登場人物、内容はフィクションです。

１．登壇

　「この件に関しまして、他に異議の在る方？」
議長席に座る男が議場を見渡した。
「はい！」
透き通るような声が議場に響き、一人の女性が手を挙げた。
「中田初音君。」
議長が発言を許可し、中田初音と呼ばれた女性議員が席を立った。
初音は襟裳の開いた白いブラウスに紺色のスーツを併せ、足音を響かせながら質問席に向かった。
男達の視線が初音の後ろ姿を追い、初音の発言を待っていた。
質問席に立った初音は背筋を伸ばし、しっかりと礼をしてから話し始めた。
「この産業廃棄物処理施設の建設についてですが・・・・」
産業廃棄物処理施設の建設は、賛成の市長派と反対の議長派とが激しく議論を重ねていた。
市長派は建設による市の雇用問題・財政問題が解決すると主張している。
それに対し反対派は、雇用・財政改善は一時的であり、環境への影響が懸念されると主張していた。
市長は産廃処理施設の建設を公約として掲げ再選を果たした。
しかし、今市議会選挙では反対派が議席を伸ばした事がさらに議会運営を難しくしていた。
また、昨今の環境への民意の高まりが反対派を後押ししていた。
民意と言えば聞こえは良いが、再選を望み、議会にしがみつく議員の中で、
一貫として反対を主張してきたのが初音であり、有権者の期待は大きかった。
「・・・・これらの事案について、市長はどの様にお考えですか？」
「えぇ・・・・今のご質問についてですが、、え～・・・」
登壇したのは60歳を過ぎ突き出た腹をベルトに乗せた市長であった。
間延びした喋りで、汗を拭きながら初音の質問をはぐらかせていた。
地元の有力者の2代目で、昔ながらの公共工事で票を集め、金権政治の権化のような男だった。
「え～と言うわけで、十分に対応できる物と、え～考えております。」
市長が答弁を終えると、賛成派からは拍手が起き、それに応えるように反対派から野次が飛んだ。
「静粛に！静粛に願います！！」
収集を計るため議長が叫び、初音は手を挙げ質問を続けようとした。
しかし、議場は両派からの野次が飛び交い、議会は中断を宣言された。
悔しそうな顔をし、初音は質問席を降壇した。
唇を噛みながら控え室へ戻る初音には、傍聴席からの視線に気付かなかった。

賛成派と反対派の代表と議長が議会再開の協議を続けていたが再会の目途は立たなかった。
その間、初音は再会に向けて書類に目を通し、他の議員と打ち合わせを行っていた。
「何とか決に持ち込めれば。」
「賛成派からの造反も含めれば、見込みは十分にある。」
「民意はこっちにある。」
興奮しながら息巻く議員に初音が釘を差した。
「油断は禁物です。あの市長がこのまま引き下がるとは思えません。」
初音は続けた。
「しっかりと結束して、もっと民意を味方に付けないと。」
初音の言葉に皆が頷いた。

２．疑惑

　結局話しあい成らず、議会は中断された。
その夜初音は資料を持ち帰り、自宅で眺めていた。
「お～い。初音。もう寝るぞ～。」
「えっ、もうそんな時間？ん～～もうちょっとだけ調べ物して寝るから、、」
「先に寝てるぞ～あまり無理するなよ。」
夫に声を掛けられ、時計を見上げながら初音は答えた。
「お休み。私も直ぐに寝るから。」
そう言って、資料をぺらぺらとめくった。
「ん、、、？」
何気なく開いた建設予定地の地図に目が止まった。
緑が豊かな山林で、綺麗な小川が流れている。現地視察で見た光景が目に浮かんだ。
「あの自然を壊すなんて、、、」
地図を目で追いながら初音は呟いた。
「あれ、、、？」
四角く線の引かれた建設予定地には東京○○林業(株)と書かれていた。
予定地の周りには地権者であろう名前も書かれており、その名前を目で追った。
「え、、、あれ、、、？」
漠然とした違和感が初音の胸にわき起こり、胸騒ぎを覚えた。
「ん～何だろう、調べてみる価値があるかも、、」
初音は予定地の所有者名と、周りの地権者の名前をメモに取り鞄に仕舞った。
「ん～～もう寝ようかな、、、、」
初音は子供部屋を覗き、寝息をたてる子供達の寝顔を眺め溜息を付いた。
「ごめんね、、、もう少しで議会も終わるから、、、」
議会に追われ忙しい初音を気遣い、我が儘を言わない我が子に初音は胸を熱くし寝室に向かった。

　次の日、初音は資料室に籠もっていた。
昨夜のメモの地権者をもう一度眺め、資料の地図を開いた。
「ん～～～何だろう、何か引っ掛かるな。」
登記簿をみても確かに昔からの地主である事は間違いがなかった。
「そもそも、この地図の元は、、、、？」
初音は手元の資料の原版を探し始めた。
「あれ、、、、無い？抜けてる、、、？」
A3版の地図帳は通し番号を振ってあるが、1冊抜けて無くなっていた。
「おかしい、、、何だろう、、、、」
初音は昨晩感じた胸騒ぎを強め、資料室を後にした。
事務所に戻った初音は建設予定地の所有者の東京○○林業(株)に電話を掛けた。
「あ～もしもし？」
電話に出たのは無愛想な男だった。
「もしもし、東京○○林業さんですか？」
「あぁ?お宅誰？」
「あの、○○市議の中田と申しますが。」
「あぁ？何の用？」
「あの、、、○○市における産業廃棄物処理施設についてお伺いしたいのですが、、、、」
「え？！あぁ、、ちょっと待って下さい。担当者に変わりますから、、」
男は電話を置き担当者と呼ばれる男に取り次いでいた。
　　”何？こんな対応の仕方って・・・どうなってるのこの会社は・・・！”
初音は男の対応に腹を立てながら、担当者を待った。
「もしもし？お待たせしました。」
「もしもし、○○市議の中田と申しますが、産業廃棄物処理施設について、、、」
「あぁ、わざわざご連絡いただいて、何か御座いましたか？」
先程の男とうって変わって、落ち着いた、物腰の柔らかい話し方をする男だった。
「いえ、大した事じゃないんですけど、○○林業さんはどういった経緯であの山を所有されたのかなと。」
「あぁ、あれはですね、、、、」
その男は、バブル時に宅地造成を見込んで買い付け、今では不良債権化してる旨を初音に話した。
「元の所有者ってご存じですか？」
「う～～ん、、私も詳しくは判らないのですが、、何だったら調べてご連絡差し上げますか？」
「あっ、、、お手数でなければ、、、、」
「いえいえ、お手数だなんて、２～３日頂ければご用意できるかと。」
「それでは、宜しくお願いします。」
初音は丁寧にお礼を言い、電話を切った。
「う～ん。判らないな、、、そうだ！」
初音は鞄を取り事務所を後にした。

　向かった先は図書館の郷土資料コーナーであった。
「この辺に無いかな・・・・あっ！在った！」
思わず声を上げた初音に他の利用者が一斉に視線を投げかけた。
「あっ、、、すいません、、、、」
初音は顔を赤くし、頭を下げながら目的の資料を手にし机に座った。
「えっと、、、、、、ん？え！！」
再び驚きの声を上げる初音に、先程より厳しい視線が投げられ、初音は体を小さくした。
そこに記載されていた所有者の名前は、現市長の祖父に当たる人物の名前だった。
建設予定地の周辺も、いやその周辺の山一体が一人の男の名前に成っていた。
「えっ、、、もしかして、、、これって、、、、、」
初音はそのページをコピーし事務所へ急いだ。

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