人妻！人妻！人妻！

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３．小さなiP○d

「今日は暑そう・・・」
家事を終えた順子は、リビングの窓から外を見つめ洗面台に向かった。
日焼け止めを丹念に塗り込み、薄い化粧を施す。
ほぼすっぴんに近い化粧に、薄いピンクの口紅を塗る。
肩甲骨まで伸びる黒いストレートの髪をポニーテールで結ぶ。
キャップの後ろから結んだ髪を出し、何時ものようにキャップを目深にかぶって公園に向かった。
昨日の雨の事もあり、大きめの青いＴシャツを選び体の線を隠す。
ギラギラと照りつける太陽に気温は上がり、公園に着く前に汗が滲み出る。
「ふぅ、、、暑い、、、」
公園についた時には既に汗でＴシャツが張り付いていた。
順子はパタパタとＴシャツを煽り、一息吐いてからコースを歩き始めた。
木陰と日向を交互に通りぬけるうちに、暑さや、汗で張り付くＴシャツの不快感が消えていく。
「こんにちは、今日は暑いですね」
何時もの老夫婦に声を掛けられ、順子も軽く会釈をしながら挨拶を交わした。
挨拶をかわし、すれ違い、追い抜かれるうちに順子は有ることに気が付いた。
　　”ウォークマンじゃなくて、ｉ…なんだっけ…”
一人でコースを回るそのほとんどの人が、イヤホンをしている。
　　”音楽か…良いな…私も買おうかな…”
音楽を聴きながらウォーキングをする人たちが少し羨ましく見える。
　　”ドリカムとか良いかも…”
順子は背筋を伸ばし、好きな曲を頭の中で再生しながらコースを歩いた。
コースの半ばを過ぎ昨日のベンチに、「こんにちは」の男が座っている。
順子は戸惑いながらも、視線をまっすぐコースに据えて男の前を通り過ぎようと足を速めた。
「あっ、こんにちは！」
順子に気が付いた男がベンチから立ち上がり声を掛けてきた。
「あっ、、こんんちは、、、」
順子は歩きながら軽く会釈をし、男の前を通り過ぎた。
「あの！すいません、ちょっと良いですか？」
順子を追いかけながら男が声を掛けてくる。
「はい、、、何でしょう、、、？」
順子は歩速を緩めながらも、足を止めずに隣に並んだ男の顔を見た。
「これ、昔使ってたiP○dです。今は使ってないからどうぞ！」
その手には男が身に着けているものより、少しだけ大きい黒色のiP○dがある。
「あの、、、受け取れません、、、」
順子は歩きながら首を振った。
「大丈夫です。まだ何台も使ってないのがありますし、一応イヤホンは新品ですから」
男はそう言いながら、順子の前に立ちiP○dをぐいっと差し出した。
「何曲か適当に入ってますから、今すぐ聴けますよ」
「そう言う意味じゃなくて、、、」
困った顔で立ち止まった順子に、男はiP○dを強引に手渡した。
「あの、、、こういったこと、、、、」
順子が押し返そうとすると、男はくるっと背を向け走り出した。
「気にしないで下さい！じゃ！」
去り際に男が振り向き、手を挙げた。
「あっ、、、」
順子は手の中の黒いiP○dを見つめ、困惑しながら歩き出した。
次に追い抜かれるときに返そうとする順子の思惑は外れ、その日は男に追い抜かれる事は無かった。

４．諦め

　何時もの時間に玄関のチャイムが鳴った。
順子は手にしたiP○dを引き出しの奥にしまい、玄関に向かった。
「ただいま～」
「おかえりなさい」
額に汗を浮かべた正が、カバンを順子に預け靴を脱ぐ。
「今日も暑かったな～」
ワイシャツの襟元を仰ぎながらリビングへ向かう正の後に順子も続いた。
「先にシャワー浴びちゃったら？汗かいたでしょ？」
「あぁ、、、そうだな」
正は面倒臭そうにソファーにワイシャツとズボンを脱ぎ、下着姿で浴室に向かった。
「もぅ、、、」
順子は少しだけ頬を膨らませ、脱ぎ棄てられたズボンをハンガーに掛けた。
正がバスタオル姿で浴室から出てきた時には、テーブルの上に料理が並べられていた。
「おっ！今日も美味そうだな～」
バスタオルで髪をごしごしと拭きながら、正はテーブルに座りＴＶのリモコンに手を伸ばす。
見計らったように冷えたビールとコップが置かれ、順子が席に着いた。
「おつかれさま。はい、ビール」
トクトクと心地よい音と共に、正のコップがビールで満たされていく。
「頂きま～す！」
正がごくごくと喉を鳴らしながら、美味しそうにビールを流し込んでいく。
「頂きます」
順子は空いたコップに再びビールを注ぎ、箸を取った。
テーブルの上の料理が次々と正の口に放り込まれ、ビールで流されていく。
美味い美味いと料理を頬張る姿に、順子は目じりを下げ口元が緩んだ。
「いや～美味かった！ごちそうさま！！」
正は少し突き出たお腹をポンと叩き、にっこりと笑った。
「お粗末さまでした」
順子も笑いながら席を立ち、ビールを残して食器をキッチンへ下げた。
「ねえ、あなた、、、一緒に歩かない？」
順子はiP○dをしまった引き出しを一瞥し、ビールを飲み続ける正のお腹に視線をうつした。
「ん～そうだな～」
だるそうに頭を掻きながら正は、ビールを流し込む。
「最近太ったからって、あなたから言い出したんじゃない、、、」
「だって、順子の作る飯が美味いんだもん」
そう言いながら微笑む正に順子は頬を膨らませた。
「もぅ、、、シャワー浴びてくるわね、、、」
頭から降り注ぐシャワーの心地よさに思わずため息がでる。
ウォーキングを始めてから、なんとなく体の調子が良く感じる。
子供を産んでいない体は張りがあり、Ｃカップの胸はツンと上を向いている。
順子は浴室でくるっとまわり、ヒップラインを鏡に映した。
「ん～もうちょっとキュッと、、、」
呟きながら少し大きくなったお尻を両手で持ち上げた。
「、、、、、、」
順子は溜息を吐きながら、浴室を後にした。

「もう寝ちゃったの？」
ベッドで寝息を立てる正に小さく声を掛け、順子はまた溜息を吐いた。

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