人妻！人妻！人妻！

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携帯電話と人妻

登場人物

大山　美奈子：４２歳
大山　達男　：４６歳
大山　光男　：１８歳

桜庭　茂　　：１９歳

＊登場人物、内容はフィクションです。

１．戸惑い

　胸がドキドキしているのは、久しぶりに繁華街に足を運んだ為だけでは無かった。
すれ違うサラリーマンや、ランチに繰り出す主婦達の視線が気になる。
まだ、やましい事はしていない。今からだってする事はない。
美奈子は自然と人混みを避けつつ、繁華街を歩いた。
すっかりと暖かくなった日差しは桜を散らせ、緊張と共に美奈子の頬を染める。
繁華街特有の据えた匂いを乗せた風が、美奈子の黒髪とスカートを揺らした。
待ち合わせの時間はまだ30分以上余裕がある。
美奈子はウインドウに映った自分に足を止めた。
何も有るわけが無いと思いつつも、シャワーを浴び、久しぶりに1時間以上掛けて化粧をした。
肩に掛かる黒髪が日差しを浴び揺れている。
薄いブルーのサマーセーターに、白いフレアスカート。
４０歳を過ぎ少し増えたウエストとお尻の贅肉。
美奈子はウインドウから目を離し、小さく溜息を吐いた。
「どうしよう、、、、」
この１週間悩み続けた迷いがぶり返してくる。
美奈子は待ち合わせ場所の直ぐ近くにある、コーヒーチェーン店に足を向けた。
「いらっしゃいませ!」
明るく笑みを浮かべる若い店員が、美奈子を憂鬱にさせる。
「ご注文はお決まりですか？」
俯きながら美奈子はアイスコーヒーを頼み、空いてる席に腰を降ろした。
普段は飲まないコーヒーが緊張で乾いた喉を潤していく。
「ふぅ、、美味しい、、、」
ストローを廻すと透明な氷がグラスにぶつかり、カラカラと小気味良い音がする。
半分ほどコーヒーを飲み干し、席を立った。
ストローに薄く付いた口紅が美奈子をトイレに向かわせる。
鏡に向かい口紅を引く自分が可笑しくなり、思わず口元を弛めた。
　　”やだ・・・初めてのデート見たい・・・”
美奈子は口紅をバッグに入れ、店を後にした。
何もないんだから、楽しもう。
美奈子は待ち合わせの場所に向かった。

２．驚き

　デパートの前には大勢の人で溢れている。
片手に携帯を持ち信号待ちをするサラリーマン。
デパートから吐き出され、飲み込まれていく主婦達。
笑顔で手を挙げ、駆け寄る恋人達。
そんな人混みの中で美奈子は周りを見回し、手にした携帯に視線を落とした。
　　”判る分けないか・・・”
興味半分、暇つぶし半分で始めた携帯の無料ゲーム。
そのサイトで知り合い、チャットで仲良くなった。
親切で優しく、なぜだか解らないが信頼できた。
知り合って3ヶ月目に携帯の番号を教えられ、迷った挙げ句ダイアルした。
思ったより若く張りのある声に戸惑ったが、電話を切るときは口元に笑みが浮かんでいた。
久々の長電話だった。
単身赴任の夫は、定期便のように短い連絡を美奈子に伝えるだけ。
そんな美奈子にとって、会いたいと言う男の言葉が嬉しくもあり、不安だった。
『４０を過ぎたおばさんよ、、、』
美奈子の言葉は、男の思いを断ち切らせるには至らなかった。
携帯が鳴るまで後５分。
美奈子はもう一度周りを見渡し、携帯を眺めた。
「あの、、美奈子さんですか？」
突然後ろから声が掛かった。
「えっ、あっ、はい！」
思わず声を上げ美奈子は振り向いた。
視線を遮るように立ちはだかる胸板が目に飛び込んだ。
「初めまして、茂です」
声が上から降り注ぐ。
美奈子はおずおずと顔を上げ、茂の顔を見上げた。
「あっ、初めまして、、、」
140センチそこそこの美奈子に、175センチの茂。
美奈子は茂に圧倒されながらも頭を下げ、茂も美奈子に続いた。
奇妙な二人の挨拶に、周りから視線が降り注いだ。
茂は頭を掻きながら、頭を上げない美奈子に話しかけた。
「あの、此処じゃ目立つから、場所移しますか」
「えっ、あっ！、、はい、、、」
周りからクスクスと笑い声が聞こえ、美奈子は顔を真っ赤にしながら俯いた。
「昼は食べました？」
茂の声に、美奈子は俯きながら頭を振った。
「じゃぁ、食べに行きましょうか」
茂は美奈子の背中を軽く押し、歩き始めた。
スタスタと歩く茂の背中を追いかけるように、美奈子は早足で歩いた。
背が高く、若い男と歩く自分に引け目を感じながら茂の後を追ってファーストフードに入った。
二人並んでハンバーガーのセットを頼む。
「お会計は？」
店員の声に二人同時に財布を開いた。
「一緒で」
茂の手が美奈子を遮り、会計を済ませた。
トレーを持ち店の奥に進む茂を追いかけた。
「此処で良いですか」
茂が空いている席にトレーを置き、美奈子に振り返った。
初めてまともに見た茂の顔は、まだ幼さの残る、自分の息子と同じ位に見えた。
「あっ、、お金払います」
美奈子は財布を開いたが、茂は笑居ながら席に着いた。
「じゃぁ、今度ご馳走して下さい」
茂につられ、美奈子は席に着いた。
周囲の視線が気になった。
チラチラと茂の顔を見ては俯き、小さくなる。
「改めまして、桜庭茂です。来てくれないと思った」
茂はニコニコと嬉しそうに笑って言った。
「あっ、、大山美奈子です」
美奈子は顔を赤くしながら言葉を続けた。
「桜庭君って、、、歳は何歳なの、、？」
「19です。大学２年になりました」
「19、、、息子と大して変わらないわ、、、」
美奈子の心の中に罪悪感が沸き起こる。
「そんな風に見えないですよ。美奈子さん、まだまだ若いですよ」
ニコニコ笑う茂の笑顔に美奈子の胸が波打った。
「そっ、、、おばさんをからかったって、何も出ないわよ」
「からかってなんか、、、」
茂は頭を掻き、照れた顔で美奈子を見つめた。
初めてデートする中学生のように二人は、無言で俯いた。

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