人妻！人妻！人妻！

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登場人物

奥村　順子：３５歳
奥村　正　：３７歳

下田　清　：３１歳

＊登場人物、内容はフィクションです。

１．ウォーキング

「さぁて、行くか！」
シューズの紐を締め上げ、順子は掛け声と共に玄関に立った。
火の元、戸締まりを頭の中で再確認し、玄関の片隅にある夫のシューズを一瞥し戸を開けた。
雲一つない空から太陽が照りつけ、何もしなくても汗がうっすらと浮かぶ。
白地のＴシャツに、黒のジャージのパンツ、日よけのキャップを目深に被り順子は何時もの道を歩きだした。

一ヶ月前の夫との会話を思い出しながら、公園を目指した。
「なぁ、一緒にウォーキングでもしないか？」
「ウォーキング？どうしたの急に？」
「いやぁ、最近俺も腹が出てきたし、健康のためにも二人で歩いたらどうかなって、、、」
「ん～良いけど、、、」
「良し！じゃあ早速スポーツ店に行こう！」
シューズにジャージ、万歩計まで買い込み嬉しそうな顔を向ける正。
「そんなに買って、、、長続きするの？」
順子の不安は三日も経たない内に現実となった。
朝は眠いから夜に歩こうと言い、仕事が疲れたから今日は歩くの止めようと言いビールを飲み始める正。
「もう、、、だからシューズとか買わなきゃ良かったのに、、、」
二人揃って歩いたのは最初の一日だけだった。
勿体ないとの思いから、夫を送り出し、家事を済ませた午前中に順子はシューズを履き散歩に出かけた。
ゆっくりと公園のウォーキングコースを歩いた。
初夏の日差しが眩しく、濃くなり始めた緑が順子を包んだ。
「こんにちは、いい天気ですね」
すれ違う老夫婦に声を掛けられ、順子はドキッとしながらも挨拶を交わした。
滲む汗に心地よい風が通り抜ける。
いつの間にかウォーキングが順子の日課になった。

「こんにちは、今日もいい天気ですね」
名前も知らない顔見知りが増え、挨拶を交わす。
午前中と言うこともあり、そのほとんどが老夫婦であったり主婦らしき女性だった。
「こんにちは！」
追い抜き様に会釈をしながらニコリと笑い、男が声を掛けてくる。
「こんにちは」
順子の声は男の背中に向けられ、一気に距離が開く。
日に焼けたその男は何時ものように噴き出す汗を気にも留めずに走り去っていった。
順子がウォーキングコースを一周する間に、三度は声を掛けられる「こんにちは！」。
「何回追い抜かれても、こんにちは」
順子は可笑しさに、笑いを堪えながら足を進めた。

２．青天の霹靂

　コース半ばに差し掛かった順子は、急に暗くなった空を見上げながら歩く速度を速めた。
さっきまで雲一つなかった空が黒雲に覆われ、今にも雨が降り出しそうになっている。
「、、、、あっ」
一粒の滴が顔に当たったと思った次の瞬間には、大粒の雨が空から降りかかってきた。
「さっきまであんなに天気が良かったのに、、、」
慌てて走り出す順子の足下は、見る見るうちに水たまりが広がっていく。
バケツをひっくり返した様な雨に順子は屋根の付いた近くのベンチに駆け込んだ。
「もぅ、、びしょ濡れじゃない、、、」
首に掛けたタオルで顔を拭き、張り付いたＴシャツを体から離しながら順子は空を見上げた。
「すいません！ご一緒して良いですか！？」
バシャバシャと足音を立てながら、男が順子の居るベンチに駆け込んできた。
「あっ、はい、どうぞ」
「すいません！」
男は息を切らせながら順子に頭を下げ、手の平で顔を拭った。
「いやぁ、突然の雨で、、、あ！こんにちは」
男は順子の顔を見るなり、笑顔で何時もの「こんにちは」と挨拶をした。
「こんにちは、ホントに、、、あんな良い天気だったのに、、、」
順子も会釈を返し、再び空を見上げた。
「ゲリラ豪雨ってヤツですかね、、、」
「ゲリラ豪雨ですか、、、」
「直ぐに止むと思いますが、それまで雨宿りだな、、、」
男は諦めたように首を振り、順子の脇を通り抜けベンチに腰を掛けた。
バタバタと屋根を叩く音が気まずさを助長する。
順子は空を見上げながら、雨が上がるのを待った。
「あの、、、何時も此処で会いますよね？」
突然男が発した声に、順子は振り向いた。
「え、、ええ、、、」
ピッチリとしたランニングウェアに身を包んだ男は、気持ち悪そうにウェアを摘んでいる。
「ウォーキングですか？」
「えぇ、、、」
「そうですよね、、、」
男は恥ずかしそうに微笑みながら、頭を掻いた。
「えっと、、、いつも何周ぐらい走ってるんですか？」
順子も何を言って良いか判らず、当たり障りのない事を男に問いかけた。
「五周走ってます」
「そんなに走ってるんですか、どうりで、、、」
「と、言いますと？」
男は不思議そうに順子を見上げた。
「毎回追い抜かれるたびに、こんにちは！って」
順子は微笑みながら、男と距離を置いてベンチに座った。
「それってウォークマン？」
男の首にぶら下がってるイヤホンを指し、順子は首を傾げた。
「これ？iP○dですよ。ウォークマンって懐かしいな」
「今はそんなに小さいんだ」
「ええ、こんなに小さくてもかなりの曲が入ってるんですよ」
「へぇ、、、凄いのね、、、」
感慨深そうに頷く順子を男は笑いながら見つめた。
「あっ、、、もう大分雨上がったわね、、、」
男の視線が気になり、順子は慌てて立ち上がった。
肌に張り付いたＴシャツは体の線と下着を浮き上がらせている。
「じゃあ、私はこれで、、、、」
軽く会釈をし、小雨になった公園を順子は家に向かって走り出した。

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