人妻！人妻！人妻！

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美人市議の受難　その４

登場人物

中田　初音：４１歳

＊登場人物、内容はフィクションです。

７.違和感

　翌日、初音は議会待合い室に座っていた。
前回中断された産廃処理施設建設の是非に付いて議会の再開を待っていたのだった。
議長の佐藤に続き、反対派の代表が待合室に戻ってきた。
待合室にいた議員達の目が注がれ、一瞬の沈黙が流れた。
「再会ですか？」
「どうなりました？」
「協議の結果は？」
議員達が二人の周りに群がり、協議の結果を一斉に訊ねた。
二人は顔を見合わせ、佐藤が口を開いた。
「まぁまぁ、皆さん落ち着いて。この件は委員会を立ち上げ別途協議する事になりました。」
議員達は騒然となり、口々に反論を唱え始めた。
「何故、議会で決しない！」
「民意は我々に付いているはずだ！」
「何か弱みでも握られているのか？！」
反対派の代表はオロオロと佐藤を見たが、予測していたかの様に佐藤は落ち着いていた。
一呼吸置いて、佐藤は言葉を発した。
「絶対に建設予定案を否決出来るとでも？僅かにこちらが優位なだけで、何人かでも造反が出れば可決の可能性も在りますよ。それに、他の案件がこの議題により審議が進まず廃案になる可能性も在ります。」
波が引くように騒ぎが収まり、最後には皆押し黙っていた。
「今我々がするべき事は、一致団結してこの件に当たることと、市民生活に悪影響が出ないように速やかに他の法案を通すことです。」
一人一人の顔を見ながら佐藤は議員達に問いかけた。
「解って頂けますか？」
振り上げた拳の降ろし場所を無くした議員達は渋々頷き、席に着いた。
「それでは、向こうにも議会の再開を伝えてきますので、失礼します。」
そう言って、佐藤は反対派代表の方を叩き出口へ向かった。
初音は代表の顔の笑みに違和感を感じ、佐藤の後を追った。
「議長。ちょっと良いですか？」
廊下で佐藤を呼び止め、横に並んだ。
周りを見渡し、人が居ないことを確認し佐藤に問いかけた。
「あの件はどうなりました？」
「今、信頼出来る記者と話をしてます。その記者に裏を取らせてから発表すれば廃案に成るでしょう。」
「そうですか、、、」
「委員会が設立されれば、時間稼ぎにも成りますから。こちら側にはより有利に事が運べると思いますよ。」
「そうですね。解りました。」
初音は佐藤が立ち去るのを待ってから、待合室に戻った。

８．不審

　産廃処理施設建設の案件が除かれた議会は淡々と決議された。
議員達が会議場から姿を消し、初音もそれに続き事務所へ向かった。
途中背後から声を掛けられ足を止めた。
「中田初音議員ですよね。私、出版社の小林と申します。」
男が差し出した名刺は、ゴシップやスキャンダルをメインに載せる出版社の名前が書いてあった。
初音は名刺と記者の顔を交互に見ながら訊ねた。
「何かご用件でも？」
初音は余計な事に関わらない様に足を進めた。
「今度ですね、全国の美人市議に訊けって言う企画がありまして。」
「はぁ、、、、」
「その、第一回の美人市議を中田議員にお願いしようかと思いまして。」
「えっ！？いぇ、、結構です。こんなおばさん見ても誰も喜びませんよ。」
「いえいえいえいえ、是非お願いしますよ。これでファンも、、いや票も増えますよ。」
「結構です。票は政策に賛同して入れていただく物ですから。」
「あっ、、そう言う意味じゃなくて、、、」
「失礼します。まだ、仕事が残ってますので。」
「あっ、、中田議員！せめて、何か面白い話しでも！」
初音は男の言葉を遮るように事務所のドアを閉めカギを掛けた。
「なんなのよ、、、もう、、」
男の無礼さに腹を立てながら、事務所を片づけ帰路に就いた。
当たりは既に暗く、いつもの家路を急いだ。
最後の曲がり角を折れると、狭い路地に黒塗りの車が止まっていた。
「こんな狭い路地に、、、邪魔だな～」
初音は車を睨み付けたが、スモークが貼られ中は見えなかった。
車を通り越すと、エンジンを廻す音が聞こえ、ヘッドライトが付いた。
後ろを振り返ると、ヘッドライトが遠目になりゆっくりと初音に向かって動き出した。
初音は早足で歩き出したが、初音の歩速に併せ車も速度を上げた。
恐怖で絡まる足を何とか動かし、駆け足で敷地に転がり込んだ。
黒塗りの車は何事も無いかのように家の前を通り過ぎ去って行った。
息が切れ、震える足でようやく立ち上がり玄関の戸を開けた。
「た、、、ただいま、、、、」
何時もの様に、子供達が駆け足で初音を迎えた。
「お帰り、、、何かあったの？」
「ママ～お帰り！！」
初音の顔を見て不審に思ったのか息子が心配そうに顔を覗いた。
「ん、、ううん。何もないわよ。ただいま。」
心配を掛けまいと、気丈に振る舞ったがまだ足は震えていた。
「何か変わったこと無かった？」
「別に、、、何もないよ。」
だっこをせがむ娘をだっこしながら息子に尋ねた。
「そう、、、それなら良いんだけど、、、」
「あっ、そう言えば道聞かれた。大阪はどっち？だって。全然遠いのに。」
笑いながら話す息子の答えに初音は愕然とした。
「どうしたの？そんな恐い顔して、、、」
「ん、、、何でもない。此からは知らない人や車に近づいちゃダメよ。」
そう言って、子供を降ろし書斎に向かった。
震える手で受話器を取り、佐藤に電話を掛けた。
「そうでしたか、、、中田さんもご家族も無事で？」
「えぇ、、、」
「どこからか情報が漏れたのかも知れませんね。それ以降何か情報を得ましたか？」
「あれからは、何も、、、」
「解りました。とにかく急がせます。」
「えぇ、、お願いします、、、、」
受話器を置き、考え込むように電話を睨み、もう一度受話器を取った。

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